片上鉄道保存会が実現させている復活運転の様子を詳細レポート

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29年3月ダイヤ改正の山陽路の旅(その6):片上鉄道保存会の復活運転に大感動

主に青春18きっぷを利用した「駅弁」と少し「呑み鉄」、そして時々「撮り鉄」の旅を名古屋からお届けします。

2017年(平成29年)3月4日に実施されたJRのダイヤ改正。その当日に可部線の延伸というか復活区間に乗車、翌日は片上鉄道の旧吉ヶ原駅に向かい、同じく復活運転を訪問します。



名古屋から山陽姫路を経由して
岡山電気軌道の路面電車は楽しい
可部線・廃線前の写真と思い出
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山陽本線・広島から岡山への鈍行旅
⇒片上鉄道保存会の復活運転に大感動(←今ここ
姫新線林野駅から名古屋へ帰宅





本ページにおいては、片上鉄道の復活運転の様子を、上記のような動画も含めて、詳細にご紹介します。以下の順で記述しておりますので、目次としてお使いください。

「柵原ふれあい鉱山公園」まで、津山駅から路線バスに乗車
片上鉄道・廃止前に乗車した時の記録
現在も生き続ける片上鉄道、吉ヶ原の展示運転
片上鉄道に、吉ヶ原駅の駅弁が存在した
鉄道の面影とともに、周匝まで歩く





「柵原ふれあい鉱山公園」まで、津山駅から路線バスに乗車


2017年3月5日、第一日曜日。岡山県久米郡美咲町にある「柵原ふれあい鉱山公園」で旧片上鉄道車両の展示運行が行われます。1991年(平成3年)6月に廃止された「同和鉱業片上鉄道線」は、岡山県備前市から山陽本線の和気駅を経由して柵原町(現・美咲町)までを南北に結んでいました。

その北側の終点のひとつ手前の吉ヶ原駅が、構内の線路とともに車両も含めて保存されています。そして車両の多くが動態保存されており、月に1回展示運転が行われています。


地図のスケールを拡大・縮小させて、片上鉄道の位置関係をご確認ください


これから、その展示運行の見物と乗車に行くのですが、片上鉄道の代替バスであった「備前片鉄バス」は全線廃止され、現在は赤磐市広域路線バスが和気~周匝間で運行されています。

しかし平日4往復、土曜日2往復、日曜祝日は全面運休となり、展示運行に訪れるためには全く使えません。鉄道営業時、朝夕は客車の通学列車もあったのに、その利用者はどこへ行ってしまったのでしょう。もちろん少子化の影響もあるでしょうが、人の流れが変わったとともに、鉄道が消えたことで地域の力が衰退してしまったのかも知れません。

結局、往路は津山からバス、復路は周匝まで歩いてバスに乗り姫新線林野駅へという経路で訪問することにしました。なお、「片上鉄道保存会」のホームページ内に、実に詳細かつ親切な公共交通によるアクセス方法が掲載されていますので、ご参照ください。

JR駅から公共交通による吉ヶ原へのアクセスは、津山が一番便利です。路線バスが、休日は4往復運行され、所要33分で吉ヶ原の駅舎前に着くことができます。

このバス路線、休日はこれから乗る11:50発が初便となり、次は13:50発となってしまい選択の余地はありません。お客さんは10名程。津山から吉井川に沿って南下します。途中で下車した1名を除き、全員同業者のようで、私を含め皆さん吉ヶ原で下車しました。

津山駅隣接の津山広域バスセンター
津山駅の道路を挟んだ対面にある「津山広域バスセンター」です。特にプラットホームはなく、駐車場に停車中のバスに直接乗るというシステム。バスに人が接触しないか心配ですが、本数も多くはなく、お客さんも慣れていて問題はなさそうです。

吉ヶ原駅前の、吉ヶ原バス停
ノンステップ、LED行先表示のバスが多くなった昨今、方向幕式のツーステップ型の昔ながらのバスは、逆に新鮮です。吉ヶ原の、まさに旧駅前に到着します。なおバスはもう少し先の高下(こうげ)が終点です。高下では、岡山~林野駅の路線に乗り換えることが出来ます。


【乗車記録】

・津山駅前11:50→吉ヶ原12:23 中鉄北部バス

⇒参考:津山市の鉄道の見えるホテル・ホテルアルファーワン津山





片上鉄道・廃止前に乗車した時の記録


復活運転の様子をご紹介すると同時に、片上鉄道が廃止される3か月前に、実際に片上鉄道に乗った時の記録もご覧いただきたいと思います。もう、26年も前の事です。別ページに記しましたので、どうぞその時の貴重な記録をご覧ください。

片上鉄道・廃止前に乗車した時の記録



現在も生き続ける片上鉄道、吉ヶ原の展示運転


では、旧片上鉄道車両の展示運行に「乗車」した時の模様をお伝えします。12:23、旧吉ヶ原駅(バス停は「吉ヶ原」)に到着。早速、列車に乗車できる一日会員証(300円)を購入します。

ちょうどお昼休みで、次の運転は旧柵原駅寄りに新設された黄福柵原駅を13:00に発車する列車となります。駅間は300m程なので、黄福柵原駅まで歩くことにします。参考までに本日の吉ヶ原駅発の展示運転は次の通りで、が黄福柵原行で他は本線での折り返しとなるそうです。


 【午前】10:00      【午後】13:08
     10:35         13:30
     11:00          14:00
     11:35         14:30
     11:55         15:00


吉ヶ原駅の外観
現役時代そのままの姿で保存されている吉ヶ原駅です。「登録有形文化財」に指定されています。

一日会員証、「片上鉄道トラ800」 1/500Nゲージサイズディスプレイモデル、「黄福柵原駅開業記念切符」
吉ヶ原駅では一日会員証の他、各種グッズを販売中。私は「片上鉄道トラ800」 1/150Nゲージサイズディスプレイモデル(500円)と「黄福柵原駅開業記念切符」(600円)を購入。この他にもファン心を刺激するグッズが多数販売されていたのですが、旅も終盤となり懐が寂しく、この2点で断念。少しでも多く購入し、車両の保存に貢献をしたいところですが…。

黄福柵原駅側の踏切から吉ヶ原駅構内を撮影
黄福柵原駅側の踏切から吉ヶ原駅構内を撮影。広い構内の一部は鉱山資料館(中央左奥の三角屋根の建物)や公園(左側)になりましたが、駅舎とホームはほぼ廃止前と変わっていないようです。

黄福柵原駅の駅舎外観
2014年(平成26年)11月2日に「開業」した「黄福柵原駅」です。周囲は広めの駐車場となっています。こちらでも一日会員証やグッズの販売が行われていました。

黄福柵原駅のホームと気動車
「黄福柵原駅」をホーム側から撮影。保存の域を超えた「本物」の駅施設です。

片上鉄道のキハ702(国鉄のキハ07)
26年振りに再会したキハ702。1936年(昭和11年製)の元国鉄キハ07です。美しい流線形は片上鉄道時代から人気がありましたが、鉄道廃止後もこうして動態保存されたことは非常に素晴らしいことで、まさに感涙モノです。

片上鉄道のキハ312
こちらは30年振りの再会となるキハ312。こちらも動態保存されています。

片上鉄道のキハ702の車内
車内はもちろん現役当時のまま、というかこの状態を維持することは、保存会の方々の並々ならぬ努力があると推測されます。頭が下がります。そして動き出した列車のエンジン音と鼓動に身を任せると、26年前が思い出され、思わず目頭が熱くなります。

片上鉄道の沿線路線図
車内には往時の路線図が掲出されています。

黄福柵原行のキハ702
黄福柵原行を後追い撮影。現役の鉄道としか思えません。(2017.3.5 13:13)


打鐘式の踏切警報機の音が、とても懐かしいです。

片上鉄道・DE13-55ディーゼル機関車
この日はドラマ撮影の準備とかで、貨物列車が編成されます。そのため、まずディーゼル機関車が動き出します。(2017.3.5 13:18)

片上鉄道のディーゼル機関車に貨車を連結
留置線の貨車3両に機関車が連結され、引き出されます。(2017.3.5 13:22)

復活運転した片上鉄道の貨物列車
片上鉄道の貨物列車が蘇りました。鉱石輸送があったころは、無蓋貨車の「トラ」を37両も連ねていたそうです。(2017.3.5 13:38)

留置された片上鉄道の復活貨物列車
貨物列車は2番線に留置されました。

片上鉄道の復活した気動車
こうして眺めると、「現役の鉄道」にしか見えません。26年も前に廃止となった鉄道が運転されるとは、まさに奇跡です。(2017.3.5 14:07)

片上鉄道のブルートレインホハフ2004
片上鉄道の「ブルートレイン」と呼ばれた客車も保存されています。国鉄からの譲渡車両と自社発注車がありますが、こちらは後者の「ホハフ2004」です。

国鉄のキハ04を譲り受けた片上鉄道のキハ303
国鉄のキハ04を譲り受けたキハ303も動態保存されています。


保存された鉄道車両は数あれど、往時の施設をそのまま利用し動態保存を行っている例は多くはありません。ここ吉ヶ原での展示運転は、地元、美咲町の委託を受けて「片上鉄道保存会」の方々が行っているそうです。

行政当局の力も大きいでしょうが、動態保存に際して、施設及び車両の保守整備は並々ならぬ苦労があることでしょう。重ね重ね頭が下がります。そして26年の時を経て、再び片上鉄道の列車に乗ることができ、保存会の皆さまには本当に感謝の念で一杯です。

地道な活動の成果であることを考えると誠に失礼かも知れませんが、最早これは「奇跡」でありましょう。私としては、「国宝」あるいは「世界遺産」級の価値を感じました。月1回の「奇跡」に出会うために、これからは是非ともまた足を運びたいと決意(?)いたしました。



片上鉄道に、吉ヶ原駅の駅弁が存在した


車両にばかり関心が向いてしまう私ですが、実は駅舎の隣りの建物で軽食等の販売が行われており、家族連れでも十分に楽しむことのできる「展示運転」です。

吉ヶ原駅のすぐお隣。週末の昼と夜に開店する“ 和ハーブ ”のカフェですが、展示運転日のお昼は、吉ヶ原地区の婦人会さんのご協力で『 まる吉弁当 』(まるきち弁当)を販売します。月に一度しか販売されない限定のお弁当。ぜひ一度ご賞味ください。」(保存会のホームページからの抜粋です。)

そこを覗いてみると、気になる掛け紙のお弁当が・・・。駅の窓口で引換券を購入して、交換するというシステムだそうで、引換券を買うとこれが何と硬券。実に凝っています。

片上鉄道のお弁当引換券
「引換券」ですが、裏に無効印が押されてそのまま戻ってきました。

片上鉄道の駅弁、「まる吉弁当」の外観と掛け紙
この掛け紙が実にいいです。駅横の公園でいただきます。なお、カフェは午後2時までの営業、この「まる吉弁当」は限定30食とのことで、要注意です。

片上鉄道・吉ヶ原駅の駅弁の中身
中身はこちら。巨大おにぎりに驚きましたが、具沢山で美味しくいただきました。 なお、このお弁当を購入したカフェは駅舎の横・・・というかホーム上にありますので、間違いなく「駅弁」と言えましょう。



鉄道の面影とともに、周匝まで歩く


さて、吉ヶ原への公共交通機関は「津山~吉ヶ原~高下」のバスが唯一。次の津山行は 15:54発で、これでは今日中に18きっぷで名古屋へ帰ることはできません。

高下で岡山行のバスに乗り換えても無理です。そこで周匝付近まで約3.5km歩き、林野駅行のバスに乗り、姫新線経由で帰ることにしました。このルートなら今日中に名古屋に着くことができます。

廃線跡の歩道から吉ヶ原駅東側終端部の車両保管庫を望む
写真中央奥のブルーシートが吉ヶ原駅東側終端部の車両保管庫です。線路跡は歩道となって続いています。

サイクリングロードとなっている片上鉄道の廃線跡
廃線跡の多くはサイクリングロードとして整備されています。

吉井川に沿ったサイクリングロード
吉ヶ原の集落を出ると、吉井川に沿ってサイクリングロードは続きます。左側の広い歩道あたりが線路跡でしょうか。

片上鉄道の旧美作飯岡駅の遺構
飯岡集落の外れに旧美作飯岡駅の遺構を発見。この辺り、サイクリングロードと廃線跡が離れていることが幸いでした。対向式のホーム跡がはっきりと残り、駅前商店らしき廃屋が諸行無常を感じさせます。

片上鉄道の美作飯岡駅の廃線跡のホーム上にて
上の写真の反対側から周匝方面を望みます。廃線跡訪問の趣味はない私ですが、乗ったことのある鉄道の遺構となると感慨深いものがあります。さらに「生きている片上鉄道」を見てきたばかりなだけに、美作飯岡駅跡との落差にしばし茫然となります。


すなわち、レールが撤去され放置された駅はこのようになってしまうわけで、吉ヶ原駅の現役当時と変わらぬ姿を保っている陰には保存会と美咲町の多大なる尽力があることを改めて感じました。しかしその一方で廃駅というのも、非常に味わい深いものです。

この美作飯岡駅跡は、鉄道遺構としての朽ち加減が適度で、「熟している」感があります。ホームに立って、時計を見たりして列車を待つフリをしてみると、山の向こうから汽笛が聞こえたような気がしました。

14:40頃に吉ヶ原を出発して、美作飯岡駅跡に着いたのが15:10頃。バスは 15:41発なので、まだ大丈夫ですが、駅跡で10分程ぼんやりとしてから、吉井川を人道橋で渡り、周匝上バス停に着いたのは15:30頃でした。

飯岡から周匝への吉井川に架かる人道橋
飯岡から周匝への吉井川には人道橋が架かります。位置としては線路跡ですが、橋桁に鉄道の面影はなく、橋脚も古くはなさそうで、鉄道の遺構なのでしょうか。


⇒続き:姫新線林野駅から名古屋へ帰宅


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