沿岸バスに乗って羽幌から豊富まで移動

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道央道北・乗り鉄の旅(その9):沿岸バスの旅・羽幌~豊富まで

主に青春18きっぷを利用した「駅弁」と少し「呑み鉄」、そして時々「撮り鉄」の旅を名古屋からお届けします。

昨年(2016年)11月、JR北海道から「当社単独で維持することが困難な路線」として、13線区が発表されました。半ば予想された展開とは言え、こうなると乗りたくなる浅はかな私。2017年3月、宗谷本線などへの「乗り鉄」の旅に出掛けました。



鹿ノ谷駅の時刻表が物語る夕張支線
夕張市内を歩く
石勝線・夕張支線の乗車記録
札沼線・豊ヶ岡駅を再度訪問してきた
新十津川駅で写真を撮る
滝川駅で写真を撮る
留萌本線・末端区間廃止後の初の乗車
沿岸バスの旅・留萌~羽幌まで
⇒沿岸バスの旅・羽幌~豊富まで(←今ここ
宗谷本線・豊富駅~南稚内まで
バスでノシャップ岬・雄大な利尻富士
稚内駅周辺を徘徊
宗谷本線の車窓・絶景と秘境駅を眺めながら(その1)
宗谷本線の車窓・絶景と秘境駅を眺めながら(その2)
深名線と名寄本線・廃線前の思い出
宗谷本線の名寄から帰宅へ



(羽幌スタート幌延駅前経由、豊富ゴールです。2時間半のバス旅です。)





「絶景領域新発見!!」、沿岸バスの車窓に感動


豊富駅まで約2時間半、お手洗いをどうするかという看過できない問題を抱えたまま、本社ターミナルから15:17発のバスに乗車。お客さんは5名程でしたが、約10分後の築別バス停までに皆さん下車され、我々2名の貸切状態になってしまいました。

沿岸バス本社ターミナルから豊富駅行きの路線バスに乗車
タイルの落下に注意しながら(???)、バスに乗ります。

羽幌から豊富行に乗り、ガラガラの貸し切り状態に
バスはしばらくすると、貸切状態に。

初山別村内の国道232号線オロロンライン
初山別村内の国道232号線オロロンラインを走行中。

沿岸バスの沿線から天売島と焼尻島の景色
天売島と焼尻島でしょう。焼尻島が手前に位置するので、左側の島影がそうでしょうか。


さて前述のように、留萌から幌延までの国鉄羽幌線は、国鉄分割民営化の前々日である1987年3月30日に廃止されました。私もP氏も羽幌線には乗車していません。

2人ともちょうど羽幌線廃止の翌月に大学に入学したのですから、当然、時間と金銭の余裕はなく、北海道まで足を延ばすことはできませんでした。しかし、このバスからの車窓風景は素晴らしく、羽幌線の車窓風景も同様に素晴らしいものだったことでしょう。

P氏も悔やむことしきりでしたが、私も列車からこの風景を楽しみたかったものです。羽幌線には間に合いませんでしたが、標津線や名寄本線(いずれも1989年廃止)には乗ることができました。紙一重のことで、残念でした。

初山別の羽幌線のコンクリートの連続陸橋(金駒内橋梁)の廃線跡
初山別の先、道路右側に羽幌線のコンクリートの連続陸橋(金駒内橋梁)があったと思われる場所。写真中央の建造物もその遺構の一部で、道路右側の斜面にコンクリートの陸橋が続いていました。


初山別村役場を過ぎ、羽幌線最大の撮影名所であった金駒内橋梁がほぼ撤去されているのを車窓から確認しつつ、バスは15:47着の「岬センター」バス停で久方ぶりにお客さんを乗せます。

「岬センター」バス停は宿泊もできる温泉施設「しょさんべつ温泉 岬の湯」の玄関前にあり、国道から約700m離れた場所にあります。

そのためか、バスに乗車する際には、「岬の湯」フロントに10分前までに申し出ないと、バスが立ち寄らないというシステム。他に「てしお温泉 夕映」バス停も同じシステムで、バスには営業所から無線でお客さんの有無が連絡されていました。


豊岬の先の羽幌線の廃線跡のトンネル
豊岬の先で、車窓からトンネルの遺構が確認できました。

沿岸バス、共成から歌越までの道
共成から歌越までは、国道と廃線跡から外れて、コの字型に内陸部を迂回します。この間約4㎞、雪に覆われた農地と農家が散見されましたが、廃屋も目立ちます。過去にはこの区間で、需要があったのでしょうか。本日は乗降客はいませんでした。

モオタコシベツ川を渡る鉄道橋、羽幌線の廃線跡
歌越の先には、モオタコシベツ川(…たぶん)を渡る鉄道橋が残されていました。この付近、遠別~初山別間は羽幌線最後の開通区間で、1958年(昭和33年)の開業とあって、近代的な構造物の遺構が見られます。


初山別、遠別といった集落の他は、ほとんど建物も無い無人地帯が続きます。羽幌線廃止時の羽幌~幌延間の運行本数は6往復で、廃止から30年近い歳月が流れているものの、沿線の様子を見る限り、乗客は少なく大赤字であったことでしょう。

対する沿岸バスは、手元にある1990年の時刻表では多くが留萌~豊富間の運行で、そのうち留萌~幌延に関しては10往復あり、札幌~豊富の特急バスは3往復でした。そして現在、留萌~幌延の直通便は8.5往復、同じく特急バスは4往復が運行されています。

鉄道代替バスの多くが年数を経ると本数が削減されたり、途中で打ち切りや乗継となったり、最悪の場合は路線ごと消えてしまう傾向にある中で、ロケーションも考慮すると沿岸バスは大健闘をしていると言えましょう。

前述のように国鉄羽幌線の廃止は1987年なので、この旅の後、2017年3月30日をもって、代替バスの運行開始から30年目を迎えたことになります。

さらに余談ながら、昨年利用させていただいた増毛のバスターミナルは、この4月1日をもって廃止とのことです。すでに窓口の営業は終了していたものの、まだ新しい施設でしたが、沿岸バスも合理化は避けられないようです。

羽幌を出発して1時間半の間、繰り返しになりますが、初山別村、遠別町の集落以外はほぼ無人地帯です。しかしながら私は尿意も忘れ、左右両側そして前部の車窓風景に釘付けとなり、深い感動に包まれました。

フリー切符に記された「絶景領域新発見」の文字に偽りはなく、まさにまだ知らない日本の風景を新発見した思いです。

沿岸バス、遠別バス待合所
遠別の市街地西端にある遠別バス待合所は、遠別駅跡に建てられました。周囲の旅館やタクシーの営業所、そして裏側の広い空き地(公園)に駅の面影を感じます。しかしお客さんはいませんでした。





日本海沿岸を離れ、天塩、幌延、そして終着の豊富へ


16:40を過ぎると天塩町の中心部に到着し、久々に出現した市街地で、これまた久々に数人のお客さんを迎えます。天塩高校バス停では10名程の部活高校生が乗車。皆様お疲れか静かな車内です。

天塩町からは海岸線を離れ、内陸の幌延へ向かいます。道路周辺は農地なのか、開けていますが、人家はなく、このような場所を通学する高校生がいることに、(余計なお世話であるうえに、失礼は重々承知のうえ…)またまた深い感動を覚えました。

しかし高校生たちも、卒業後はこの地を離れることになることでしょう。そう思うと切なくなり、涙が頬を伝います。そのうち、車窓左手に出現した利尻富士の雄大な姿が、涙の私を慰めてくれます。

沿岸バス、天塩から幌延への車窓
天塩から幌延への車窓、風力発電の向こうに利尻富士が出現します。そろそろ薄暗く。

幌延駅の駅舎
17:12、幌延駅到着。駅前や幌延町内で少しずつお客さんが降りていきます。

沿岸バスの車内の萌えっこのディスプレイ
料金表示器に現れる「萌えっ子」に旅の無聊が癒されます。


参考幌延駅のトレインビュー旅館・民宿旅館サロベツ会館


幌延市街地を抜け、原野の中、「トナカイ観光牧場前」バス停を通過すると、次は「深地層研究センター」バス停を通過。耳慣れない施設で、近代的な工場のような建物が見えます。

そういえば幌延町に核燃料関係の施設が建設されたような記憶があり、後で調べると「日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター」という正式名称で、高レベル放射性廃棄物の地層処分を研究する施設でした。ここはあくまで研究施設で、最終処分場ではないとのことです。

さらに10分程走ると、豊富温泉で現在は6軒の宿泊施設があります。故宮脇俊三先生もご宿泊された由緒正しい温泉で、先生の「油臭かった」との感想に惹かれて、P氏もその昔、泊まったことがあるそうです。我々と同世代の「乗り鉄」は、大なり小なり宮脇先生の影響を受けています。

なお、この温泉はやはり、「僅かに油分を含み弱い石油臭あり。」と紹介されています。ちょっと想像ができないので、一度は入浴したいものです。

数分で豊富の市街地です。豊富高校、大通1丁目、大通4丁目、豊富営業所、大通7丁目、大通9丁目を経て、17:42に終点の豊富駅に到着。終点まで乗車したのは、天塩町からの高校生2名と我々の計4名でした。

近所に豊富高校があり、両校とも普通科にもかかわらず、天塩高校からここまで約1時間の長距離通学は、何か事情があるのでしょうか。

ちなみに天塩高校のホームページを拝見すると、在学生で豊富中学校出身者は9名とのこと、余談ながら、この3月の卒業生53名のうち進学が35名、就職が18名で、就職先は役場や農協、自衛隊、建設会社等です。割と地元で就職される方が多く、先ほどの涙は撤回させていただきます。

羽幌から豊富までのバスの料金表示
留萌からは2,780円。「萌えっ子フリーきっぷ」の一日券利用で2,370円でした。

豊富駅の駅舎と沿岸バス
到着したバスは、お客さんがいれば17:45発の豊富温泉行となる特殊な運行形態です。今日はお客さんがいないようで、回送車として発車しました。利用者は少なかったようで、この4月のダイヤ改正で、17:45発の豊富温泉行は廃止となりました。


約2時間半の長いバス旅ながら、車窓風景に目を奪われて、非常に短く感じられました。繰り返しになりますが、「絶景領域新発見!」の言葉に偽りはありませんでした。

お手洗いについても、車窓に気を取られていたためかP氏ともども全く問題なし。北海道の原野で2時間後のバスを待つ、あるいは、高校生の乗っているバス車内で運転手さんに「緊急停車」を申し出るという、人間失格な事態は避けられたのでした。

でもやはり、留萌~豊富間で2回は数分程度の休憩時間が欲しいものです。反面、この区間を通しで乗るお客さんはいないということでしょう。

先ほどのバスも利用状況からすると、留萌~羽幌と天塩~豊富に運行区間が分割されてしまうといかんので、余計なことは言わないことにして、素直に素晴らしい車窓風景を提供していただいた沿岸バス様に感謝いたします。


乗車記録

・羽幌本社ターミナル15:17→豊富駅17:42 沿岸バス


⇒次:宗谷本線・豊富駅~南稚内まで


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