元気甲斐(小淵沢駅)を食べた記録

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元気甲斐(小淵沢駅)・・・テレビ企画で誕生して、丸政の地位を不動にした駅弁

高原野菜とカツの弁当で大いに名を上げた、甲斐の国、小淵沢駅の駅弁業者である株式会社丸政さんが、1985年に放映されたテレビ番組、愛川欽也の探検レストランにおける駅弁企画を活用して誕生させたのが、ここでご紹介する元気甲斐です。(正確には「ふもとの駅弁 元気甲斐」)

当時はネットなど無く、テレビのパワーは今の若い人が想像するよりもはるかに強力でしたので、放映翌日からは小淵沢に人が殺到し、瞬く間に名物駅弁が誕生しました。

元気甲斐


しかし、単純にテレビ放映されたから有名になって今に至るまでのロングセラーとなっているのかと言えば、それは全く違うと言えるでしょう。

まず、ネーミングが抜群でした。ここまで秀逸なのは、丸政さんが考えたのではなくて、もしかしたらテレビ局のコピーライターが考案したのではないかと勝手に想像しています・笑。それほど、一発で覚えられる凄い名前です。あの牛肉どまん中に匹敵する、「横綱レベル」の名称ですね。

・・・と思っていたら、今更ながら丸政さんのホームページを見ていたら、やはり名付け親は岩永嘉弘さんという方で、コピーライターでした・笑。長年の勘が当たりました。

そして岩永さんは、鉄道関連では、東武の特急「スペーシア」の名付け親でした。JRの「ioカード」の名付け親でもあります。交通絡みでは、「ソラシドエア」もネーミングしているようです。

それから、30年前に大学生だった私が初めて元気甲斐を食した時、「こんなに美味い駅弁は今まで無かった」と衝撃を受けた事を覚えています。それだけ明確に「美味しい」と納得できる味だからこそ、変化の激しい時代を生き残ってきたと言えます。

味が素晴らしいのは、上下二段に分かれている駅弁のそれぞれを、京都の「菊乃井」と東京の「吉左右」という、二軒の料亭が競い合うようにしてメニュー開発を行ったからです。

明らかに、今までの駅弁業者が作るような、ありふれて誰でも思いつくような内容ではなく、思わず「あっ!」と声を上げてしまいそうな、見た事も味わった事も無い駅弁だったと言えます。

その元気甲斐を、30年ぶりに再び食べてみました。その時の模様を動画にも記録しておきましたので、ご覧ください。久しぶりに食べた割には、淡々と食べていますが・・・。




購入データ
購入場所 小淵沢駅1階のお土産物屋さんのMASAICIで購入。
購入日時 2019年10月29日、12時すぎに購入。
価格 1600円(税込み)
ラベル表示 元気甲斐のラベル表示
製造 株式会社丸政
山梨県北杜市小淵沢町996番地
0551-36-2521
http://www.genkikai.org/ekibentou.html





未だに色あせない美味しさ、これを凌駕する弁当はそう簡単には作れまい


30年ぶりに食べた元気甲斐。以前と全く同じ内容なのかは、記憶にありません。上下段共に、ご飯が多いのだけは覚えていて、年齢を重ねた今も、当時と同じように完食できるかどうか、少々不安を持って元気甲斐と対峙しました。当時の私から、「元気かい?」と聞かれているかのようです。

元気甲斐

お品書き
一の重(京都の「菊乃井」監修) 二の重(東京の「吉左右」監修)
・胡桃御飯
・蓮根の金平
・山女の甲州煮
・蕗と椎茸と人参の旨煮
・蒟蒻の味噌煮
・カリフラワーのレモン酢漬
・ぜんまいと揚げの胡麻和え
・セロリの粕漬
・栗としめじのおこわ(銀杏・蓮根入り)
・アスパラの豚肉巻
・鶏の柚子味噌あえ
・わかさぎの南蛮漬け
・山牛蒡の味噌漬け
・沢庵


最初に、京都の「菊乃井」が担当した一の重から。ご覧のように、やや濃い色合いの茶飯となっています。濃厚な味わいながらも意外とさっぱりと食べられるクルミご飯です。おかずを含めて、敢えて渋い色合いにして、二の重との色合いの対比も考えていると思われます。

元気甲斐の一の重


クルミは、しっとりとしています。炊き込みご飯、あるいは混ぜご飯にしたら当然で、これはこれで自然な感じで良いですね。サクッとした食感の、越後湯沢駅のくるみ山菜すしも思い出します。駅弁を食べまくっていると、各地の特色ある駅弁と比較しながら食べる事が出来て、楽しく感じます。

一の重の胡桃御飯


4区画に小分けされたおかずの部分の、向かって左側2つです。一番左のカリフラワーのレモン酢漬けなど駅弁屋さんが思いつくような品ではありませんし、ぜんまいと揚げを胡麻和えにしたものも、作れそうで作れない逸品です。

その隣の、蕗や椎茸の甘煮も、基本的には薄味で、京都らしい感じはするものの、やはり甲斐の国は山の中ですから、どこか力強い味付けとしているように感じられます。こんにゃくの味噌煮が添えてあるので、そう感じるのかもしれません。




一番右側は、レンコンのきんぴらの上に、セロリの粕漬けが乗っています。セロリの漬物は、最近は旅先で見かけるようになりました。漬物にしてはさっぱり感が強く、箸休めに格好ですね。



そして、ヤマメの甲州煮です。甲州煮というと分かりにくいですが、要は甘露煮です。甘露煮の甘辛の味わいと、その上に乗せられたレーズンとのミスマッチが意外なほど効果的で、食べてみて驚きました。こういう点が、まさに料亭の味ですね。




次に、東京の「吉左右」が担当した二の重です。ほんのりと色づき始めた秋の気配みたいなものを感じます。二の重は区画で分けられておらず、栗としめじのおこわの上におかずをそのまま盛り付けています。白いキャンバスに絵を描くが如くであり、慣れないと、調製はとても難しい作業になると思います。

今回食べてみて感じたのは、一の重のクルミご飯と二の重のおこわが、全く「競合」しないという点です。全く別物のように出来上がっているので、ご飯が多すぎて往生する事が全くありませんでした。やはり、全体をしっかりとチェックして完成させたなと思わせます。

元気甲斐の二の重


二の重には、肉類が入っているのが嬉しいです。この、鶏の柚子味噌和えは絶品でした。いわゆる鶏めし弁当のような鶏肉が当時の駅弁のスタンダードでしたから、こういう「料理」には心底驚いたものです。・・・ま、細かい記憶は飛んでしまっているのですが。

鶏の柚子味噌和え


アスパラの豚肉巻きです。細かくカットしてあり、作るのが大変そうですね。

アスパラの豚肉巻き


そして、わかさぎの南蛮漬け。単なる天ぷらにするとベトつきますので、そこはさすが料亭、食べて美味しく感じられないような入れ方はしません。お見事です。東北や九州の某駅弁メーカーさんにも、こういうところを見習ってほしいものです。(ボヤキ)

わかさぎの南蛮漬け


一の重と二の重を担当した東西の各料亭については、京都の菊乃井は現在も高級料亭として経営が拡大しており、京都の本店などは、5万円もするコースもあるようです。私はお店のランク付けなどは全く信用しないというか、気にしない質ですが、ミシュランガイドで三ツ星との事です。
http://kikunoi.jp/kikunoiweb/Top/index

一方で、東京の吉左右なる料亭については、ネットで情報がありませんでした。当時は菊乃井と競い合うほどだったものが、今はもう存在していないという事でしょうか?

そうだとしたら、元気甲斐という1つの駅弁を通じて、栄枯盛衰の非情さを感じる事になります。元気甲斐というネーミングからも、皮肉を通り越して残酷さまで感じますね。

そんなことを考えながら、私たちはこの元気甲斐という頭抜けた存在の駅弁を、これからも嗜んでいかなくてはなりません。何があっても丸政さんには生き延びて頂いて、これからも甲斐の国や信州などを旅する際のお供をして頂きたいのであります。

今は亡き鉄道紀行作家の宮脇俊三さんもえらく感心していた元気甲斐を、これからも残して頂いて、今後は50年、100年と、超ロングセラー駅弁として成長させて欲しいと思います。


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