奥久慈しゃも弁当(常陸大子駅)を食べた記録

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奥久慈しゃも弁当(常陸大子駅)・・・今まで食べた鶏肉駅弁は何だったのか???

全国の駅弁の中でも、食通を自負する人から特に好まれているように見受けられるのが、茨城県の水戸駅と福島県の郡山駅(正確には安積永盛駅)を結ぶ水郡線の、茨城県最北部に位置する常陸大子の駅前の玉屋旅館が調製する「奥久慈しゃも弁当」です。

お店が古臭く見えるので、昭和の初期くらいから駅弁が存在しているように感じるものの、実は奥久慈しゃも弁当の登場は1985年(昭和60年)のつくば科学万博の時。その際のイベントとして、SL列車が水郡線を走行するのに合わせて、奥久慈しゃも弁当が誕生しています。と言ってももう35年が経過していますから、昭和は遠くなりにけりです。

玉屋旅館の外観


駅前旅館の年代物の物件の引き戸を開けると、何とも言えない玄関が、姿を現しました。訪問したのはまだ肌寒い3月で、ストーブが焚いてあります。ストーブには、何やら鍋が置かれています。入ってくる者に直接対面するように設置された椅子も、不思議な雰囲気です。この椅子に、普段は玉屋旅館のおばあちゃんが座っているものと思われます。

玉屋旅館の玄関


さて、声を張ってお店のオバちゃんを呼び、通されたのは2階のこんなお部屋です。かなり年季の入った部屋で、昭和の香りが濃厚です。奥にはリアルな鳥のはく製が鎮座しており、それを注視すると鶏肉の料理が喉を通らなくなるので、視界から外れた位置で、私は食事をしました。

玉屋旅館の不思議なところは、旅館と名が付くものの、今は旅館の営業は行っていない事。温泉には入れると聞いた事はありますが、災害でお湯が濁るようになってからは、果たしてどうなのでしょうか。元々お風呂に入る気はなかったので、その点、うっかり聞き忘れてしまいました。

玉屋旅館の客室


さて、玉屋旅館は圧倒的に、奥久慈しゃも弁当で有名です。待つことしばし、駅弁としての体裁も完璧な、恋焦がれた奥久慈しゃも弁当が出てきました。

この田舎の僻地の玉屋旅館さんですが、掛け紙に駅弁マークが使われている事で分かる通り、日本鉄道構内営業中央会の会員です。その割には駅構内では販売しておらず、今となっては駅弁というよりも、実態は駅前弁当ですから、(恐らく)会費を支払ってまで中央会の会員であり続ける必要はないと思いますが、そのような事になっています。

いちおう、電話連絡を入れればホームで駅弁を受け取れますから、辛うじて駅弁としての体裁は守られています。でも、もしかしたらお年を召したお店の人がホームまで届けてくれるのかと思うと、この高齢化の時代、わたし的にはそういう注文は憚られるのであります。

駅弁、奥久慈しゃも弁当


それにしても、いくら駅弁マークがついているからと言って、駅で買えなくて駅前で入手するとあっては、駅弁として取り扱って良いのか、本当のところは迷います。(いや、ホームで受け取れるならば駅弁なのですが・・・。)

2020年現在、駅構内にはヤマザキYショップが併設されており、そのお弁当コーナーでは地元のお弁当が売られていて、駅弁らしい体裁はありませんが、実態としては、むしろそちらを駅弁と称しても良いのではないかと思ったりします。

というか、「ヤマザキYショップで奥久慈しゃも弁当を売ってくれよ!」と思うのですが・・・。たぶん、ショップの冷蔵庫で時間を置くと、随分と味わいが変わってしまうのだと思います。

が、そのような理屈めいた話は常陸大子のようなド田舎ではどうでもよく(失礼!)、玉屋旅館の奥久慈しゃも弁当、そして駅構内のヤマザキYショップの地元駅弁、更には駅前で営業している、ド田舎(失礼!)としては超絶レアな駅そば屋さんと、三位一体となった供食サービスの充実ぶりが、実は大変に凄いことなのであります。大都会のJR東日本クロスステーションさんには、ちっとは見習ってほしいわ。

さて、常陸大子駅のそういった様子や、玉屋旅館の外観、お部屋内部、そして肝心の奥久慈しゃも弁当を食べた時の記録は、以下の動画にもまとめておりますので、ぜひご覧ください。




購入データ
購入場所 常陸大子駅前の玉屋旅館で購入。
購入日時 2020年3月25日に購入。
価格 1180円(税込み)
ラベル表示 奥久慈しゃも弁当のラベル表示

長谷川績子さんが大女将で、妹の充子さん
と二人三脚で駅弁を作り上げたそうです。
製造・販売 茨城県久慈郡大子町大子718
玉屋旅館
0295-72-0123


 


駅弁好きなら一度は食べたい、玉屋の絶品鶏肉弁当なのだ


玉屋旅館の2階で待つこと15分ほど(実は他の料理も注文している・後述)、運ばれてきた待望の奥久慈しゃも弁当です。駅弁としての体裁で提供して欲しかったので、重箱に入ったものではなく、「あくまで駅弁で」と念を押して、出してもらいました。

本当ならば、駅弁はテイクアウトが前提ですが、これ以外にも色々とオーダーしたので、お店のご厚意で、実はお味噌汁もサービスで付けて頂いてしまいました。感謝申し上げます。

奥久慈しゃも弁当


駅弁の容器は、完全にホカ弁屋さんのそれでありますが、やはり掛け紙が存在して、しかもそれに十文字で紐が結わいてあると、もうれっきとした駅弁と言った風体になります。

奥久慈しゃも弁当


そして目を見張ったのが、やはり圧倒的な奥久慈しゃもの存在感です。関東にもいくつもの鶏めし弁当が存在する中、これほどまでに大胆に、そしてボリューミーに鶏肉をドーンと乗せてくる駅弁は、他に思いつきません。

このページを書いたつい数日前に、秋田比内地鶏の鶏肉の駅弁を食べたのですが、今回の奥久慈しゃも弁当とは全くの逆、吉野家の牛丼並みに薄くカットした鶏肉がごくわずかに乗っているだけのシロモノであり、とにかく、どれだけ奥久慈しゃも弁当が凄いのかがよーく分かります。

奥久慈しゃも弁当


そして、ささがきごぼうを介して炒り卵が添えられており、いや、添えるというよりももっと量が多いのですが、副菜は香の物ときゃらぶきが少々です。余計なものが一切無いのも宜しい。




奥久慈しゃもとは、茨城県営業戦略部販売流通課のホームページによると、「名古屋種とロードアイランドレッド種の交雑種(雌)をかけて誕生」との事です。説明なのに意味が不明な、いかにも役人的な一文でありますが、恐らく名古屋種とは名古屋コーチンの事で、ロードアイランドレッド種とは、アメリカのロードアイランドのニワトリの事で、交配用の鶏のようです。

そして、奥久慈しゃもは、日本三大シャモにも日本三大地鶏にも名前が挙がっている点が、その美味しさを物語っています。日本三大シャモとは、奥久慈軍鶏、薩摩軍鶏、東京軍鶏の事。日本三大地鶏は秋田比内地鶏、奥久慈軍鶏、名古屋コーチンです。

そんな有名な鶏肉を、惜しげもなくこのように厚切りにして、価格わずか1000円チョイで提供されると、利益度外視でやっていらっしゃるのではないかと心配にもなります。

奥久慈しゃも弁当


ささがきごぼうです。意外と言っては失礼ですが、形が揃っていて、美しさを感じます。ささがきごぼうとは、読んで字のごとく笹の葉のようにカットするゴボウの事であり、文字通り本当に笹の葉状に「笹掻き」できている駅弁など、初めてお目にかかりました。

ささがきごぼう


もう一度、奥久慈しゃも。流石にもも肉だけではコスト的に厳しいのか、むね肉とミックスされています。この鶏肉煮の弾力の凄さは、今まで食べた駅弁の中でダントツのナンバーワンです。食べ始めた時点では、余りにも口の中で弾かれる感じがして、困惑さえ覚えました。

この強い弾力は、肉が極太にカットされているからに違いありません。そしてもちろん、奥久慈しゃも自体、凄まじい弾力を持っています。この時以来、市販の安い鶏肉を食べると、奥久慈しゃもの旨みをつい思い出してしまって、普通の鶏肉が美味しくないという、困った現象に悩まされています・笑。

奥久慈しゃも弁当


そして、もう一つ私をうならせたのが、奥久慈しゃもの卵で作った炒り卵です。後にも先にも、これほど美味しい炒り卵は、食べた事がありません。

奥久慈しゃもの炒り卵


奥久慈しゃもの煮汁が浸みこんだご飯です。これがまた、コクがあって美味しくて・・・。先ほどの炒り卵とこの煮汁入りのご飯だけで駅弁を作って下さっても、恐らく大人気になると思います。「奥久慈しゃもの炒り卵弁当」とでも銘打っていただいて。600円くらいで販売したら、例えば京王の駅弁大会あたりで売りだしたら、飛ぶように売れると思います。

奥久慈しゃも弁当のご飯


今回の奥久慈しゃも弁当、歯ごたえが良すぎて、よく噛んでジックリと食べるタイプの私にとっては、想像以上に、食べ終わるのに時間がかかりました。時間がかかる=長らく旨みを楽しめる、という事ですから、お値段以上のお得な体験でありました。

そう言えば、この奥久慈しゃも弁当、調製の最後に、お店のおばあちゃんがその味を必ず確かめると聞いた事があります。それは絶対に譲れない作業なのだと。何とか、奥久慈しゃも弁当は末永く続いて欲しいと願います。





同時に注文した奥久慈しゃもの料理も紹介


今回の玉屋旅館訪問は、家族帯同でした。妻と、育ち盛りの2人の大学生の男子に奥久慈しゃもを馳走しました。メニューはこれです。しゃも弁当と記載されているのは、上記で記した駅弁としての奥久慈しゃも弁当ではなく、しゃものお重の事です。分かりにくい・笑。

玉屋旅館のメニュー


男子その1は、しゃも弁当です。駅弁としての奥久慈しゃも弁当をお重に盛ったものであり、内容的には全く同一です。お味噌汁が付いて、駅弁よりも100円高くなります。これを食べた息子は、「今まで食べた鶏肉は何だったのか!?」と驚いていました。

玉屋旅館のしゃも弁当


男子その2は、しゃも親子丼です。奥久慈しゃもを溶き卵にした親子丼に、更にもう1個、奥久慈しゃもの黄身を乗せています。個人的に、この親子丼が絶品でございまして、私は親子丼なる食べ物に実はほとんど興味がなかったのでありますが、人生を考え直そうかと思ったくらいに美味しすぎました。

玉屋旅館さん、味付けが変に濃すぎず甘過ぎず、素材の味を存分に引き出すレベルの丁度良いゾーンを見事に見つけ出していますね。奥久慈しゃもを食べるなら、まずは玉屋旅館を考えろと口コミする人がいると言うのは、実に納得なのであります。

玉屋旅館のしゃも親子丼


妻は、ライスは不要だという事で、しゃものステーキを注文しました。何かタレでもかけているのかなと思ったら、あっさりと塩焼きにしただけの状態です。向かって右側がむね肉、左側がもも肉に移行する場所を使っています。

奥久慈しゃものステーキ


これに関しては、単に焼くのであれば、焼き鳥にしてビールを飲みたいと思ってしまいました・笑。いや、これでも十分に美味しい訳ですが、塩を振られると、やっぱりビールでしょw

妻と二人で、やたらと「ビール飲みたい」と言っておりましたが、この日はクルマを運転して袋田の滝を見物しに来たのでありまして、満足感と共に、悔しさも胸に秘めて玉屋旅館を後にしたのでした。

私は鶏の唐揚げが大好物なので、奥久慈しゃもを使った唐揚げ弁当も食べてみたいので、ぜひ商品化して欲しいと、そんな事も考えたのでありました。妄想も膨らむ、玉屋旅館の奥久慈しゃも料理でした。

参考常陸大子駅の駅弁(玉屋旅館など)情報まとめ


 
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