巻狩弁当(新富士駅)を食べてみた記録

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巻狩べんとう(新富士駅)・・・インスタ映えの代わりに何処を見るべきなのか?

大正年間に創業した老舗の駅弁業者、富陽軒さんが、東海道新幹線の新富士駅の開業を記念して作ったのが、ここでご紹介する巻狩弁当です。1988年の開業ですから、今年(2021年)で33年目を迎えるお弁当になります。竹取物語弁当と並び、新富士駅の富陽軒の駅弁としては「名物」と言えます。

当サイト管理人は、2015年11月と2020年12月の2回、巻狩弁当を食べており、想像以上に良く出来た駅弁だと感心しています。掛け紙を十文字にひもで結ぶ、いかにも駅弁らしスタイルを貫いており、2020年に購入した以下の写真を確認しても、5年前から変更点は無いようです。

巻狩弁当の外観


巻狩(まきがり)とは何かについては、掛け紙に以下のように説明が記されており、親切です。とは言え、「源頼朝が富士の裾野で巻狩をした」と言われても、巻狩そのものの意味が分かりません・笑。

巻狩とは当時の狩猟であり、それはすなわち軍事訓練であり、身分の高い人が行うとある意味遊び感覚でもあったようで、富士の巻狩には数十万人も集まったとの事で、国家行事だったのでしょうね。

巻狩べんとうのラベル表示


開封してみると、このようなお弁当です。わっぱ状の容器に入れられています。この容器が案外と大きくて、小食の人が食べるとお腹いっぱいになる事間違いなしです。30年以上前に考案された駅弁ですから、今の時代の「インスタ映え」とは少々かけ離れた雰囲気であるのは止むを得ません。

巻狩べんとう


購入データ(私が購入した時の記録です)
購入日と場所 2回目:2020年12月25日(新富士駅改札外ベルマート売店)
1回目:2015年年11月21日(新富士駅下りホーム富陽軒売店)
価格(税込) 2回目:1200円、1回目:1100円
製造 株式会社富陽軒
静岡県富士市松岡1190番地
0545-61-2835
http://www.fuyouken.com/ekiben





職人の技が光る「巻狩べんとう」に、大いに感心する


インスタ映えしないような事を書きましたが、この駅弁は、そういった見方で食べてはいけません。

・・・と、その前に、2020年と2015年のそれぞれの巻狩弁当を見比べてみます。左右が逆になっているのは、撮り方が不統一なためであり、ご容赦ください。入れられている中身に変化は無いようです。


●2020年の巻狩弁当

巻狩べんとう


●2015年の巻狩弁当

巻狩弁当の中身


写真だけでは中に何が入っているのか少々分かりにくいので、お品書きの画像も貼り付けておきます。多種多様なおかずを楽しめるという点を考慮すると、「源頼朝風・幕の内弁当」と表現しても良いかもしれませんね。

もっとも、幕の内弁当の三種の神器と言われている、玉子焼き、焼き魚、蒲鉾については、玉子焼きのみが入る点や、ご飯が白飯とは言え、ゆかりが振りかけられている点を考慮すると、幕の内弁当とは言い難く、富陽軒さんの創作料理のわっぱめしと言ったところでしょうか。

巻狩べんとうのお品書き


さて、インスタ映えなどではなくて、巻狩弁当の見どころを考えてみましょう。おかずの部分を、もう一度ご覧ください。実は巻狩弁当は、このおかずの詰め合わせに、職人技が光るのです。

先ず第一に、おかずとご飯の部分に、明確な区切りがありません。一応、笹の葉でおかずとご飯の境界線は「設置」してあるものの、笹をポンと置いてご飯を入れておかずを盛り付けるような、そんな簡単なやり方が通用しないのは、ちと想像すれば分かると思います。

巻狩弁当のおかず


おかずの左半分を写します。牛肉煮や蕗煮、その後ろに鶏のきじ焼き(醤油やみりんなどに漬け込んでから焼いたものの事)や鮭の照り焼き、筍の古武士煮が配置されています。手前側に、信田巻きです。




右半分は、奥に玉子焼き、手前側にしめじの旨煮、ちぎりこんにゃく煎り煮、そして少々見にくいですが、茎山葵漬けが配置してあります。

ここで気が付くのが、お弁当を盛り付ける時に多用されている小さなカップやバランが、皆無に等しいという点です。茎山葵漬けだけが、プラ容器に入っているのみです。

つまり、何も「置き場所」が無い状態からおかずを盛り付けてゆく訳で、こんな芸当は簡単なようで非常に難しい事なのです。試しに、ご自分でお昼ご飯のお弁当などを、何も無い状態からおかずを綺麗に配置するように盛り付けてみて欲しいと思います。

美しく、かつ素早く盛り付けるのは、至難の業です。しかも品数が豊富で、少量多品種を盛り付ける訳ですから、熟練の職人芸と言って良いでしょう。まるで空白のキャンバスに自由に絵を描くような如くであり、慣れないとごちゃ混ぜになってしまいますよね。




下の写真は、2019年5月に、駅弁好きの友人と共に、製造元の富陽軒さんの事務所兼工場にお邪魔しました際に、友人が食べた巻狩弁当です。盛り付けが、バシッと決まっていますね。既に見て頂いた別の写真とは、細かい部分でわずかに配置が異なっており、職人によって、盛り付けに多少の自由度が認められているのかもしれません。でも、基本的な配置は同一になっています。

比較的多数のお弁当を、限られた時間で一気に作っていく中での盛り付けですから、隙間なく埋め尽くされたおかずの無駄のない配置は、じっと見ているとアート作品のようにも思えてきます。

巻狩弁当


まあ、中身は何を食べても美味しいのですが、私の好みは鶏の雉焼きと鮭の照り焼きですかね。






駅弁ですから、生野菜を入れられない点は、大いなるハンディキャップではあります。家庭で作るお弁当の場合は、生野菜の鮮やかな緑色やトマトなどの赤みを加えて、見栄えのする作り方ができます。

長時間の品質管理の観点からそれが出来ない駅弁は、業者によっては着色料満載の食材を入れてきたりしますが、私が見たところでは、富陽軒さんはそのような事はほとんどやっておられないと思います。

その代わり、盛り付けの匠の技で人を感動させるのが、富陽軒さんなのです。この業者はどの駅弁を食べても細かいところまで工夫が凝らされており、感心します。2020年~2021年はコロナでお客さんが激減していて大変に厳しいと思いますが、なんとか巻狩弁当がこれからも存続する事を願っています。



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